· 

脳出血と画家と住宅改修

ケアマネから脳出血の方の住宅改修の依頼があった。

 

脳血管障害の方の住宅改修はよくある。後遺症としてどのようなことがあるか?

 

人により違うので、対象者を見ないと何が必要になるか分からない。

 

さっそく対象者宅を訪問した。既存住宅地、木造2階建て、築30年、一般住宅。

 

 

 

対象者は脳出血で右半身がほぼマヒしている。ゆっくりではあるが、自立歩行している。

 

日常生活動作もゆっくりではあるがほぼ自立で出来ている。しかしいつ転倒しても

 

おかしくない不安定な歩行状態だ。また家族には障害があり、介助はできない。

 

対象者は訪問介護を受けている状態だった。

 

この環境で対象者に動いてもらい、出来ること出来ないことを確認し、要望を聞いた。

 

 

 

対象者宅はトイレと浴室に親が使用した手すりがつけられていた。親の世代の手すりの

 

場合、トンチンカンな付け方をしていることが多い。やたら低いとか、つかみにくいとか、

 

つかんだものの立ち上がれなかったりすることがある。この対象者宅の手すりは何とか

 

駆使して使える状態だった。これに追加するようにして、トイレ、洗面脱衣、玄関周辺、

 

室内階段、玄関外階段に手すりを付けることになった。

 

また、2階にアトリエ室があるので、そこの要所に手すりを付けることになった。

 

この計画で見積を提出し、施工した。

 

 

 

実は対象者宅を訪問して、玄関扉を開けた瞬間にとんでもない驚きがあった。

 

それは玄関ホールに80号位の絵が掛けられていた。その絵は若い時に修復に携わった

 

世界遺産の風景だった。いまでこそ日本人がツアーでも行くくらいの場所になった。

 

しかしその絵を描いていた頃は、日本人にはほとんど知られていない遺跡の頃の絵。

 

しばらくそこに立って眺めていた。絵の迫力といい、こんなにびっくりしたのは初めて

 

だった。対象者は画家で絵は自身が描いたものだった。何となく感動してしまった。

 

いままで何件もの対象者宅を訪問して、こんな出会いがあったのは後にも先にもない。