ケアマネから認知症で帰宅願望のある方の住宅改修の依頼があった。
この場合はほとんどが相談だけのことが多い。見積を見てびっくりする家族。
話を聞いただけで内容の複雑さを考えて断念した人。こちらに図面を描かせて
その図面をもとに勝手に相見積する人。
今回どのようなことになるか分からないけど、さっそく対象者宅を訪問した。
新興住宅地、軽量鉄骨造2階建て、築20年、一般住宅。
対象者は認知症で老人ホームに入所している方だった。対象者家族が時々、ホームを
訪問するたびに「家に帰りたい」を繰り返しているようだ。家族中で相談の上、
検討してみることにした。そこで、老人ホームのケアマネに相談して話になった。
対象者は寝たきりに近い状態でたまに歩く。声を掛けて表情を少し変えるくらい。
排せつはおむつを使用し、食事は柔らかいものだけ、ほぼすべての日常動作に介助が
必要な状態。それでも家族に会うと「家に帰りたい」とよく言っているようだ。
対象者は車いすを予定した。対象者宅は公道の道路床面から建物の1階床面までの
高低差は約2m。これをどのように昇降するかが問題になった。
①長いスロープを設置する。②機械昇降を検討する。③人力で昇降する。
①を検討した。スロープの長さが普通に作ると20m位は必要になる。妥協して15m位に
設定したとしても敷地内でこの距離は確保できない。この方法はなくなった。
③について家族に説明した。対象者はそんなに軽くなく、一週間に1回にしても家族の
負担が大きくなるとのこと。これも候補から無くなった。
②の機械を利用した昇降には大きく分けて3種類の方法がある。
一つ目は車いすをセットして階段を直接上るベルト式の昇降機、もう一つは階段昇降機、
もう一つは車いすごと上下垂直に昇降する。これのメリットデメリットを家族に説明した。
家族は車いすごと上下垂直に昇降する機器を選択した。施工費もだいたい説明した。
昇降機を設置するためには設置するためのスペースを作らないと置けない。その費用も
昇降機と同じくらいかかってしまう。それでも見積もりがほしいとのことで提出した。
案の定、家族は金額を見てびっくりした。
設置するためのスペースは擁壁を作るのと同じだった。それと段差昇降機は段差が
70cm以下の昇降機は安いが、段差が1.5mを越えると極端に高くなる。
今回の住宅改修は相談明けで終わってしまった。