ケアマネから認知症の方の住宅改修の依頼があった。
認知症はよくある話ではあるが、人によって違うのでさっそく対象者宅を訪問した。
既存住宅地、木造3階建て、築10年、店舗兼用住宅。
対象者は認知症で日常生活動作がかなり低下していた。室内は何とか移動はできるが、
体調のすぐれない日はトイレも介助が必要になる。入浴は常に介助が必要だった。
デイサービス以外は外出することもなくなった。また視力低下もあった。徐々に転倒する
回数も増えてきた。転倒はするもののけがとかはなかった。
家族の協力もあるが、その家族の中の一人が脳梗塞で左が片麻痺していた。この環境の中で
店舗も営業していた。忙しい家庭環境だった。訪問時、対象者は話ができない状態だった。
家族に話を聞き、出来ること出来ないことを確認し、要望を聞いた。
脳梗塞の方のための手すりは一部あったものの、対象者にはほとんど使えなかった。
まずは1階から3階まで階段に手すりがなかった。トイレに手すり、浴室に手すり、
廊下に手すり、寝室の周辺に手すりを付けることになった。一般的によくある対象者の
身体に合わせた上に、片麻痺の脳梗塞の方にも使えるような手すりを設置した。
この計画で見積を提出し、施工した。
この工事完了から二年経過したある日、家族の片麻痺の脳梗塞の方から電話があった。
手すりの追加だった。トイレをもっと使えるようにしたいとの事だった。手すりを
追加することになった。この時、家族はこの方が一人になっていた。この二年間で認知症の
方も家族も亡くなったことを聞かされた。こんなこともあるのかと思う次第だった。
そして工事日が決まった。工事日の前の日に脳梗塞の方が入院した。工事はケアマネの
立会いのもと工事することになった。その数日後、今度はこの脳梗塞の方が亡くなった。
今回の場合、近くに親族がいなく手続きが複雑になった。
何とも言えない、今までに味わったことのない住宅改修だった。