ケアマネからがんで入院して筋力低下の方の住宅改修の依頼があった。
ケアマネからの情報によると新築中で間もなく退院するが、そこに手すりとかが
どのようにすればいいのか全く分からないので検討したい。協力してもらいたとのこと。
さっそくどのような新築物件なのか、対象者宅を訪問した。
既存住宅地、木造2階建て、新築中、二世帯住宅。
対象者は脊髄ガンを患い放射線治療中、室内移動は車いすで足こぎができる。
場合によってトイレでの移乗に軽介助が必要。経緯は聞かなかったが、「バリアフリー」の
自宅を新築中。都内の建築設計事務所が設計し、地元の工務店が施工している。
建物を見ると設計事務所が設計したような風貌の建物。バリアフリーと言いながら
片開きの重い玄関ドア。玄関の上り框は3cmと小さな段差。トイレを一見すると
やや広めに作っているようだ。しかし、介助するには非常に難しい。一般住宅のトイレより横幅が455mm広く出来ている。その広い場所の真ん中に便器を置いた。つまり壁に
手すりを付けるとして、便器に座って手すりをつかもうとしたら、小柄な人の場合、
遠くて手すりをつかみにくい。逆に便座に座る場合も遠くてすわりにくい。しかも床には
床暖房が埋め込まれていた。ここで便器の手すりの種類が絞り込まれた。便器の周りに
付ける置き式の手すりにしても床のビス止めでないものを選ばないといけない。しかも
対象者の場合は片側手すりの跳ね上げが必要だった。ここまで制限されると探すのに
時間がかかる。そこで対象者にこの状況を説明して、手すり設置の手法を検討してもらった。
壁から付加した状態で手すりを設置するか、もしくは全面的にトイレ改修するか?
一般的な手すりよりはすっきりしないが、壁から付加した手すりにすることになった。
この便器の設置の位置は介助が必要になった時も介助し難い位置にある。
また、この住宅には小さいながら住宅用エレベーターもあった。また見てびっくりした。
極小タイプのエレベーターで大人が立って乗るタイプだった。小さいのが目的で
設置したかどうか経緯は聞かなかったけど、車いすでの昇降はできない。車いすの
フットレストを折りたたみ、車いすを押すためのハンドルを折りたたんだとしても
車いすの昇降は難しいエレベーターだった。
建築設計事務所がバリアフリーをうたって新築した物件。世の中には建築設計事務所は
いっぱい存在する。公共施設のバリアフリーの設計ができる設計事務所もいっぱいある。
しかし、個別の住宅のバリアフリー設計ができる設計事務所はほとんどない。これが現状だ。
一般的住宅のトイレの幅(柱間)は910mmで
この住宅の場合1365mmで出来ていた。
この状態だと手洗い器もあり、車いすの
アプローチが難しい。
また介助のスペースももう少し必要になる。
トイレの展開図
こんな手すりの設置になった