医療関係者から病院内にある浴室の改修の相談があった。
病院は大手ゼネコン設計施工で完成した建物。直接相談すればいいことを提案した。
大手ゼネコン設計部だと、その道に詳しい方はいるはずなので、その方に相談したらいいと
詳しく話した。しかし、病院を作ること、つまり玄関周辺をどのような計画にするとか、
病室全体の計画をどうするかに関しては立派にできるらしい。
その病院の医療関係者が浴室の手すり一本の話をした時、話が全く通じなかったようだ。
そこで医療関係者が困って相談してきた。
建物は鉄筋コンクリート造、よく使う浴室は今回対象になるところ。その現状の浴室は
タイル張りで、浴槽が一つ設置済み。手すりが2本付いて、浴槽は幸い座ることのできる
形状のものだった。脱衣室7㎡、浴室7㎡で介助が必要な人にはほどよい浴室だ。
多少元気な方だと二人くらいは入浴できる。さすがゼネコン設計で、そつがない。
しかし、介助が必要な人を看護師なり、ヘルパーが介助する場合は勝手が悪かった。
まずは廊下から脱衣室に入るのに12cmの段差があった。脱衣室から浴室に入るのに
さらに9cmの段差があった。なぜこの段差があるかは疑問が残った。
今回はあらゆる方が利用することを想定して計画することになった。
自力で歩ける人、杖ついて歩く人、車いすの人、ストレッチャーを利用する人など。
脱衣室は入口のスロープ部分に手すりを着け、浴室入口周辺に脱衣のための手すりを設置。
脱衣のイスはすでに設置済み。浴室入口の段差は脱着式の軽いアルミ製のスロープを計画。
洗い場で座ったり立ち上がったりするための縦手すりを設置。 浴槽周辺は少しだけ
手すりを必要とする人のための手すり、浴槽に座って入る人のための手すりなどを計画。
筋力低下でゆっくりはいる人や足の可動域制限を考えて入浴する場合、この浴槽は
座れるようになっているので、角度を4段階設定できる可動式手すりを計画。
また、病院ならではの計画として、全介助の人の入浴として天井吊のリフトを使えるような
計画とした。天井部分に鉄骨を配置してリフトで吊り上げて入浴ができるようにした。
このように計画して、仕様書、図面、見積書を計画した段階で施工開始を待っていた。
この施工の話が病院の上層部へ進んだ段階で、施工の話は消えた。この計画でゼネコンが
施工することになり、われわれは手すりの納品だけで仕事が終わってしまった。
完成を見ることがなかった。