ケアマネから脳出血の方の住宅改修の依頼があった。
脳の疾患によるマヒを伴った改修の依頼はよくある。今回も右マヒによる失語症もある。
認知障害もあるようだ。対象者は入院中で本人と会うことはなかった。
ケアマネに指示された住宅に向かった。対象者の家族が対応してもらった。
対象者宅は既存住宅地、木造2階建て、築25年、平坦な宅地であった。
帰宅したら、車いす生活になることを伝えられた。
このような状況だと対象者の動きがほとんど分からないので、現状実測で終わった。
入院先のPTの連絡先と連絡をとることを承諾してもらった。
住宅の一階は細かい段差が多く各敷居は2~3cmの段差が各所にあった。
廊下に面して便所や洗面脱衣が並んでいた。車いすで生活するには難しい状態。
入浴もかなりの介助を必要とする作りとなっていた。
この現状を平面図に描きこみ、改修案も合わせて入院先のPTに見てもらった。
改修案はトイレの位置は同じで、浴槽の位置が変わった。
廊下から洗面所に入ることにした。洗面所からトイレに入る。洗面所から浴室に入る。
もともとが広くないために、洗面所は洗濯機置き場に困った。場所を移すことになった。
浴室はユニットバス、便所は三枚扉で出入り、床は張り増しして、段差がないようにした。
出入口はテラス側からスロープもしくは段差昇降機の設置の選択肢を設定した。
PTの意見としては手すりを数か所、あったらいいかなとのことだった。他にはなかった。
これで見積を提出して、連絡待ちの状態だった。
待っても待っても全く連絡がこなかった。相見積でもない。
数か月後、たまたま近くを通りかかったところ、改修工事が完了していた。
ほかの会社で改修したのかなと思ってその場は終わった。しかしそれは違った。
初めてのケアマネ、それから一切の連絡もなかった。他のケアマネからある日、話があった。
改修工事のための平面図なり、仕様書がほしかった。そのためにかばさんを利用したらしい。
誰が望んだのか分からないが、何ともかわいそうなケアマネだと思った次第だった。
計画に対価を払ってもらえば、施工が可能な図面を作成することは可能だ。
しかし、日本の社会は「計画や設計」に対してそれ相当の対価を払う文化はない。
「計画や設計」は無料で実施するのが当たり前のように思う方が多いのは確かだ。
これが改修前の現状平面図