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脳梗塞と住宅新築

脳梗塞で車いす生活となった方の住宅を新築することになった。

 

脳梗塞になった家族からの依頼で、小さな住宅の設計をすることになった。

 

移動は車いす主体となり、トイレの移乗は自力でなんとかでき、入浴は要介助状態。

 

条件として、予算の限度額、トータルで介護を考えた住宅を作ることなどであった。

 

そこで夫婦と犬が同居の生活、車いすで生活が可能な住宅を設計した。

 

基本設計期間は約10日間、実施設計約10日間、工事期間3か月以内になった。

 

 

 

間取りは居間台所と寝室と便所洗面浴室をメインにして、この家に玄関はない。

 

門の引戸からアプローチを経由して、スロープで直接居間へ入っていく。

 

居間台所は10畳位の一体型、寝室は6畳位に収納と簡単な洗面所、寝室の脇に便所洗面所とユニットバスを配置した。介護を考えた最小限の生活空間を設計した。

 

この住宅を家族にプレゼンして、了解を得て、施工へと進むことになった。

 

 

 

建物の形状は、平屋建て、庇をやや大きめに出して、屋根勾配を対角線上に斜めに設けた。

 

風がやや強い地域なので庇の形状も風を逃がすことができるような形状にした。

 

平面形状は真四角に近く、建物の中心に7寸角の大黒柱を配置、大黒柱の上に上り梁、

 

上り梁は建物の対角線上に掛けてあり、屋根をかけた。大屋根のような形状。

 

屋根は瓦棒仕上げ。外壁は窯業系サイディング。

 

室内の床は段差のない、節ありヒノキの無垢で、壁は目透かしのシナベニヤ張り。

 

天井は勾配に合わせて駆け込み天井(斜め)としてある。

 

 

 

寝室のベット脇には車いすで利用できるように洗面台が置いてある。

 

洗面台の洗面器はかばさんの知人の陶芸作品をセットした。

 

洗面の利用頻度は高く利用していた。利用者側には木製台の使い方に問題を感じた

 

 

 

 

便所脱衣ユニットバスはコンパクトなものにした。ユニットバスのサイズは1216。

 

一枚引戸とし、介助を優先した配置とした。手すりは基本的な位置に3本。

 

便器は最新のもの、最小限度の手すり設置。便利なしびん洗浄水栓を設置。

 

 

 

確認申請を提出し、確認がおり、窓口の担当者に「この家は玄関がないですよね?」と言われ、平面図をよく見ているなと思い感心した。

 

 

 

確認申請と同時に、家族の依頼で施工会社数社から相見積することになった。

 

工事金額は適正な金額であるか、数量を見落としていないかなどなど精査した。

 

予算の限度額があり、高くもなく安くもない会社を選定することになった。

 

 

 

施工中は大黒柱に上り梁を掛ける時が一番の難点となったが特に問題はなかった。

 

 

 

完成後、この住宅に何度か訪問することがあり、様子もうかがうことができた。

 

最初の目的は、問題なくクリアできた。使い勝手は特に問題なかったようだ。

 

しかし、対象者の病状は数年後、進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

玄関はないが、ここがアプローチ周辺。

 

この建物の左側から直接居間に入っていく。

 

木のデッキはこの地域では寿命十年で再検討が必要。

 

 

 

 

 

知人に作ってもらった洗面器

 

木製のテーブルに設置したが

木部の腐食が早かった。